「オイルフィルターの品番が違うけど、見た目がそっくりなら使っても大丈夫?」そんな疑問をお持ちではありませんか?この記事では、品番違いのオイルフィルターがなぜ危険なのか、実際に起こりうるトラブルや口コミを徹底調査。
さらに、オイルフィルターの重要な役割や、純正品・社外品の価格相場まで解説し、愛車を守るための正しい知識を提供します。
オイルフィルターの品番違いは使用して問題ない?実態を調査
車のメンテナンスにおいて、エンジンオイルと並んで重要な役割を果たすのがオイルフィルターです。定期的な交換が推奨されていますが、いざ交換しようとした際に「品番が違うオイルフィルターでも使えるのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。特に、見た目がそっくりだったり、外径や高さが同じだったりすると、安価な製品や手に入りやすい製品に目が行きがちです。
しかし、オイルフィルターの品番違いは、エンジンの保護性能に直結する重要な問題です。安易な選択は、エンジンの寿命を縮めたり、予期せぬトラブルを引き起こしたりするリスクを伴います。ここでは、オイルフィルターの品番違いがもたらす具体的な影響と、その実態について詳しく解説します。
品番違い:形状がそっくりなオイルフィルター
「見た目がそっくりだから大丈夫だろう」と安易に考えてしまいがちですが、形状が似ているだけのオイルフィルターには、見えない部分に重要な違いが隠されています。これらの違いは、取り付け時のトラブルや、取り付けられた後のエンジン保護性能に大きく影響します。
特に注意すべき点は以下の通りです。
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ネジピッチとネジ径:オイルフィルターの取り付け部には、エンジンブロック側のネジと合致するネジが切られています。形状がそっくりでも、このネジのピッチ(ネジ山の間隔)や直径がわずかに異なるだけで、正確に取り付けることができません。
無理にねじ込むと、エンジン側のネジ山を損傷させ、オイル漏れの原因となるだけでなく、最悪の場合は走行中にフィルターが脱落し、エンジンオイルが全て漏れ出してエンジンが焼き付く重大な事故につながる可能性があります。
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Oリング(パッキン)のサイズと材質:オイルフィルターとエンジンブロックの間に挟み込まれるOリングは、オイル漏れを防ぐための重要な部品です。形状が似ていても、Oリングの直径や厚み、さらには使用されているゴムの材質が異なることがあります。サイズが合わないOリングでは適切なシール性が確保できず、オイルのにじみや漏れが発生します。
また、耐熱性や耐油性に劣る材質のOリングでは、エンジンの熱やオイルの化学作用によって劣化が早まり、早期にオイル漏れを引き起こすリスクがあります。
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バイパスバルブの開弁圧:オイルフィルターが詰まった際に、ろ過されていないオイルを一時的にエンジンに供給することで、オイル供給不足を防ぐのがバイパスバルブです。このバルブが開く圧力(開弁圧)は、車種やエンジンによって最適値が異なります。
品番違いのフィルターでは、この開弁圧が適切でない場合があります。開弁圧が低すぎると、フィルターが詰まっていなくても常にろ過されていないオイルが流れ込み、エンジンの摩耗を促進します。逆に高すぎると、フィルターが詰まった際にオイルがエンジンに供給されず、オイル供給不足によるエンジンダメージにつながります。
- アンチドレンバックバルブ(逆流防止弁):エンジン停止時にオイルフィルター内のオイルがエンジンブロック側へ逆流するのを防ぐバルブです。このバルブが適切に機能しないと、エンジン始動時にオイルがフィルターからエンジン各部に供給されるまでに時間がかかり、その間、潤滑不足による初期摩耗が進行してしまいます。特に寒冷時や長期間エンジンを停止していた場合に影響が出やすくなります。
これらの見えない違いが、エンジンの長期的な健康状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、形状がそっくりだからといって安易に品番違いのオイルフィルターを使用することは避けるべきです。
品番違い:外径や高さが同じオイルフィルター
外径や高さが同じオイルフィルターを安易に使用することは、前述した内部構造やろ過性能の違いから、具体的なエンジントラブルに直結する危険性をはらんでいます。たとえ一時的に問題なく取り付けられたとしても、長期的に見ればエンジンの健康を損なうことになりかねません。
考えられる具体的なリスクは以下の通りです。
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エンジン保護機能の低下:車種ごとに最適なろ過精度とろ過流量が設計されています。品番違いのフィルターを使用すると、ろ過性能が不足し、エンジンオイル中の微細な金属摩耗粉やスラッジが除去されずにエンジン内部を循環し続けることになります。これにより、エンジン内部の精密部品(ベアリング、カムシャフト、ピストンリングなど)の摩耗が促進され、エンジンの寿命が著しく短くなる可能性があります。
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オイル漏れやにじみ:Oリングのわずかなサイズ違いや材質の違い、またはフィルター取り付け面の精度が純正品と異なる場合、取り付け初期は問題なくても、エンジンの振動や熱、経年劣化によってオイル漏れやにじみが発生しやすくなります。オイル漏れは、オイル量の減少による潤滑不良や、最悪の場合、火災の原因となることもあります。
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フィルターの破損や変形:エンジンのオイルポンプから送られるオイルは、フィルター内部で高い圧力がかかります。品番違いのフィルターがその圧力に耐えられない設計の場合、ろ材が破れたり、フィルターケースが変形したりする可能性があります。ろ材が破れると、ろ過されていないオイルが直接エンジンに供給されるだけでなく、破片がエンジン内部に侵入し、重大な損傷を引き起こすこともあります。
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燃費の悪化やエンジン出力の低下:ろ過性能が不十分なオイルが循環することで、エンジン内部のフリクション(摩擦抵抗)が増加し、結果的に燃費の悪化や本来のエンジン出力が発揮できなくなることがあります。
- メーカー保証の対象外:万が一、オイルフィルターが原因でエンジンにトラブルが発生した場合、指定された品番以外のオイルフィルターを使用していたことが判明すると、自動車メーカーや部品メーカーの保証対象外となる可能性が非常に高くなります。修理費用は全て自己負担となり、高額な出費を強いられることになります。
これらのリスクを考慮すると、外径や高さが同じであっても、品番が異なるオイルフィルターを使用することは、エンジンの長期的な健全性を損なう行為であり、決して推奨できるものではありません。エンジンの設計者は、そのエンジンに最適なオイルフィルターの性能を厳密に計算して品番を決定していることを理解しておくべきです。
問題ないという口コミもあるがおすすめできない
インターネット上の口コミや掲示板などを見ると、「品番違いのオイルフィルターを使ったけど問題なかった」「見た目が同じなら大丈夫だった」といった意見を目にすることがあるかもしれません。しかし、これらの口コミを鵜呑みにして安易に品番違いのオイルフィルターを使用することは、非常に危険であり、プロの視点からは決しておすすめできません。
なぜ「問題ない」という口コミが存在するのか、その背景にはいくつかの理由が考えられます。
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短期的な使用では問題が顕在化しにくい:オイルフィルターの性能不足や不適合によるエンジンダメージは、すぐに症状として現れるとは限りません。数千キロ、数万キロと走行を重ねるうちに、じわじわとエンジンの摩耗が進行し、気づいた時には手遅れになっているケースが多くあります。
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ユーザーがトラブルに気づいていないだけ:エンジン内部の微細な摩耗や性能低下は、一般的なドライバーが日常的に運転する中で体感できるものではありません。専門的な診断機器や分解検査を行わない限り、問題が発生していることに気づかないまま走行している可能性も十分に考えられます。
- たまたま要求される性能と近似していた:ごく稀に、異なる品番であっても、たまたまそのエンジンが要求する性能(ろ過精度、開弁圧、流量特性など)と非常に近い特性を持つフィルターが存在する可能性はゼロではありません。しかし、これは偶然に過ぎず、意図的に選択するべき理由にはなりません。
「安物買いの銭失い」ということわざがあるように、オイルフィルターのようなエンジンの心臓部を守る重要な部品において、目先の安さや手軽さだけで品番違いの製品を選ぶことは、最終的に大きな損失につながる可能性が高いのです。
エンジンの長期的な健全性と安全性を確保するためには、必ず車種とエンジンに適合する純正品、または信頼できるメーカーの適合品(純正同等品や高性能フィルターなど、必ず適合品番を確認したもの)を使用することを強く推奨します。
オイルフィルターの役割と各製品の価格を紹介
エンジンオイルは、エンジン内部の潤滑、冷却、清浄といった重要な役割を担っています。しかし、エンジンが作動するにつれて、金属の摩耗粉、燃焼によって生じるスラッジ、炭化物といった不純物がオイル中に混入します。
これらの不純物を放置すると、エンジンの摩耗を促進し、性能低下や故障の原因となるため、定期的なオイルフィルターの交換が不可欠です。
オイルフィルターの役割
オイルフィルターの主な役割は、エンジンオイルに含まれる不純物を取り除き、オイルを清浄に保つことです。フィルター内部には特殊なろ紙が折りたたまれて収納されており、このろ紙がオイル中の微細な粒子を捕集します。これにより、エンジン内部の部品が摩耗から保護され、エンジンオイル本来の性能が維持されます。
また、オイルフィルターには、エンジン始動時にオイルが逆流するのを防ぐ逆流防止弁や、フィルターが目詰まりを起こした場合にオイルの流れを確保するためのリリーフバルブ(バイパスバルブ)が内蔵されているのが一般的です。
リリーフバルブは、フィルターが目詰まりしてオイルの流れが悪くなった際に、未ろ過のオイルを一時的に循環させることで、エンジンへのオイル供給が途絶えるのを防ぐ安全装置として機能します。しかし、これはあくまで緊急時の機能であり、フィルターの目詰まりはろ過性能の低下を意味するため、定期的な交換が推奨されます。
オイルフィルターの価格:純正品
純正オイルフィルターは、自動車メーカーが自社の車両向けに設計し、供給している部品です。車種ごとに最適な性能と互換性が保証されており、高い信頼性が特徴です。
項目 | 内容 |
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特徴 | 自動車メーカーが車種専用に設計。品質、信頼性、適合性が最も高い。 |
価格帯(目安) | 1,000円~3,000円程度 |
主な入手先 | 自動車ディーラー、正規部品販売店 |
メリット | 車種への完璧な適合、高い品質保証、安心感。 |
デメリット | 社外品と比較して価格が高め。 |
オイルフィルターの価格:高性能フィルター
高性能オイルフィルターは、純正品よりもさらに高いろ過性能や耐久性を追求して開発された製品です。スポーツ走行を行う車両や、エンジン保護を重視するユーザーに選ばれることが多いです。
項目 | 内容 |
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特徴 | ろ過効率の向上、オイル流量の最適化、耐熱性・耐圧性の強化などが図られている。 |
価格帯(目安) | 2,000円~5,000円程度(特殊なものはさらに高価) |
主なメーカー例 | HKS、BLITZ、TRUST、PIAA、MONSTER SPORTなど |
メリット | エンジンの保護性能向上、オイル寿命の延長(製品による)、スポーツ走行時の性能維持。 |
デメリット | 純正品や一般的な社外品よりも価格が高い。車種によっては適合品が限られる。 |
オイルフィルターの価格:社外品
社外オイルフィルターは、自動車メーカー以外の部品メーカーが製造・販売する互換部品です。幅広い選択肢と手頃な価格が魅力ですが、品質はメーカーによって様々です。
項目 | 内容 |
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特徴 | 純正品と同等またはそれ以上の性能を持つものから、安価な汎用品まで幅広い。 |
価格帯(目安) | 500円~2,000円程度 |
主なメーカー例 | BOSCH、DENSO、PITWORK、PMC、VICなど |
メリット | 価格が安い、入手しやすい、選択肢が豊富。 |
デメリット | 品質にばらつきがあるため、信頼できるメーカーの製品を選ぶ必要がある。粗悪品に注意。 |
オイルフィルターの品番違いの使用はおすすめできない!
オイルフィルターの品番違いは、たとえ形状が似ていても内部構造やろ過性能、バイパスバルブの作動圧などが車両本来の設計と異なるため、使用は推奨できません。一見問題なく取り付けられても、オイル漏れやエンジンオイルのろ過不足によるエンジントラブル、最悪の場合はエンジン本体の損傷につながるリスクがあります。
エンジンの寿命を延ばし、安全に走行するためには、純正品か社外品かを問わず、必ずご自身の車両に適合する正しい品番のオイルフィルターを選ぶことが最も重要です。