「レバーホイスト」と「レバーブロック」。カタログを並べても、違いは見つかりません。それもそのはずで、この2つは同じ機械を指しています。
「レバーブロック®」は株式会社キトーの登録商標で、同社のチェーンレバーホイストに付けられた商品名です。「宅配便」と「宅急便」の関係と同じです。
ではなぜ、別物のように語られるのか。この記事では、その背景と、名称ではなく仕様で選ぶための判断軸を整理します。
レバーホイストとレバーブロックの違いは?結論から解説

結論:「レバーブロック®」はレバーホイストの商品名(登録商標)です
両者に機能上の違いはありません。「レバーブロック®」は、レバーホイストという製品カテゴリの中にあるブランド名です。
- レバーホイスト(チェーンレバーホイスト):手動のレバー操作で荷物の巻上げ・巻下げ・けん引を行う機械の一般名称。「レバー式巻上兼牽引機」とも呼ばれます
- レバーブロック®:株式会社キトーが自社のチェーンレバーホイストに使用する登録商標(商品名)
したがって、他社製のレバーホイストを「レバーブロック」と呼ぶのは正しい使い方ではありません。見積書や作業指示書で「レバーブロック2台」と書くと、キトー製を指すのか、単にレバーホイスト全般を指すのかが伝わらず、現場で違うものが届く原因にもなります。
なぜ「別の製品」と誤解されるのか
「レバーブロック®」は、株式会社キトーが日本で初めて開発したレバー式の巻上兼牽引機に付けられた商品名です。以来70年以上にわたって現場で使われ続け、同社サイトによれば日本で業界トップシェアを占めています。
商品名が定着しすぎた結果、カテゴリ名そのもののように使われるようになりました。「レバーブロック持ってきて」という現場の会話が、あたかも別の機械が存在するかのような誤解を生んでいます。
「hoist=吊り上げる/block=固定する」という語源から2つを区別する説明がありますが、これは誤りです。レバーブロック®はチェーンレバーホイストそのもので、荷締め・固定に加えて巻上げ・巻下げ・けん引にも使われます。
レバーホイストの構造
手動のレバー操作でロードチェーンを巻き取り、荷物の巻上げ・巻下げ・引き寄せ・荷締めを行う機器です。電源が要らず本体も小さいため、トラックの荷締め、橋梁や建設現場での位置合わせ、造船や林業の引き寄せ作業まで、電源を引けない現場ほど出番があります。
- レバー:往復させることで巻上げ・巻下げ・けん引の動作を行う
- 切替つまみ:巻上げ/巻下げの方向を切り替える
- ブレーキ機構:手を離しても荷重を保持し、荷の落下を防ぐ
- ギア機構:レバーの力を増幅し、少ない力で重量物を動かす
- ロードチェーン:荷重を支えるチェーン。高強度の合金鋼が使われるのが一般的
- フック(上・下):荷や固定箇所に掛ける。外れ止め金具付き
- 遊転(フリーホイール)機構:無負荷時にチェーンを手で引き出せる機構。搭載機種と非搭載機種がある
段取りの速さを左右するのは、この最後の遊転機構です。非搭載機では、必要な長さまでチェーンを送り出すのにレバー操作を繰り返すことになります。
レバーホイストの特徴とチェーンブロック・電動ホイストとの違い

レバーホイストの特徴
レバーを往復させると内部の歯車機構とラチェット機構が作動し、ロードチェーンを巻き取って荷を動かします。動力は人力のみ、使用するチェーンはロードチェーンです。垂直に吊るだけでなく、水平・斜め方向にも引けることが、チェーンブロックとの決定的な差です。
カタログで示される主な用途は次のとおりです。
- 荷締め、緊張
- けん引、引き寄せ
- 巻上げ、巻下げ
- 位置合わせ、ゆがみ取り
得意なこと・苦手なこと
強みは、電源のない場所でそのまま使える機動性と、荷締めのように「引いて張る」作業への対応力です。片手で持ち運べる機種なら、高所や足場の上まで持ち上がります。
弱点は揚程です。手動で1ストロークずつ巻き取る構造上、数メートル持ち上げる作業には向きません。長い揚程が必要ならチェーンブロック、繰り返しの多い定常作業なら電動ホイストに分があります。
チェーンブロックとの違い
チェーンブロックは、本体から垂れ下がったハンドチェーンを手繰り寄せて巻き上げます。上から吊り下げて垂直に使う前提の構造で、揚程を長く取れるため、工場や倉庫での吊り上げ向きです。横引きや斜め吊り、荷締めへの使用は取扱説明書で禁止されている場合がありますので、使用前に必ず確認してください。
| 項目 | チェーンブロック | レバーホイスト |
|---|---|---|
| 操作方法 | ハンドチェーンを手繰り寄せる | レバーを往復させる |
| 使用方向 | 垂直方向(横引き・斜め吊りは取扱説明書の指示に従う) | 垂直・水平・斜め |
| 標準的な揚程 | 長め | 短め |
| 本体サイズ | 大きめ | 小さめ・軽量 |
| 主な用途 | 工場・倉庫での吊り上げ | 荷締め、けん引、位置合わせ |
電動ホイストとの違い
電動ホイストはモーターで巻き上げるため、重量物でも速く、作業者の負担がありません。ただし電源の確保が前提で、本体は大きく高価です。動力により駆動される巻上機の運転業務は、労働安全衛生法上の特別教育の対象となる場合があります。
電源のない屋外で1〜2箇所だけ引くなら、電動を持ち出す理由がありません。レバーホイストは工具箱から出してその場で使えます。
| 項目 | 電動ホイスト | レバーホイスト |
|---|---|---|
| 動力源 | 電気 | 人力 |
| 使用場所 | 電源のある場所 | 制約なし |
| 作業速度 | 速い | 遅い |
| 本体サイズ | 大きい | 小さい・軽量 |
| 価格 | 高め | 安め |
レバーホイストの選び方
まず定格荷重です。ここを外すと、他をどれだけ吟味しても意味がありません。
定格荷重は、実際にかかる荷重に対して余裕を持たせて選びます。吊り角度がつくとフックにかかる力は荷の重量を上回りますし、けん引作業では動き出しの瞬間に静止摩擦分の力が上乗せされます。カタログの数値ぎりぎりで選ぶと、現場で足りません。
次に揚程。吊り上げたい高さ、あるいは引き寄せたい距離に対してチェーン長が足りているかを確認します。標準揚程で足りなければ、チェーン長を指定できる機種を選びます。
そして本体質量。足場の上で片手で保持する時間が長い作業ほど、本体の重さが効いてきます。
防錆仕様と遊転機構は、条件が当てはまるときだけ確認すれば十分です。屋外や海沿いなど腐食する環境で使うなら防錆仕様を、段取り替えが多い現場なら遊転機構の有無を見てください。
具体的な定格荷重・揚程・質量はメーカーや機種により異なりますので、必ずカタログと取扱説明書で確認しましょう。
レバーホイストを使うときの注意点

レバーが重くて動かないのは、定格荷重を超えているという信号です。パイプなどを継ぎ足す「レバー延長」はしないでください。設計上の力を超える入力がかかり、レバーの曲がりやチェーンの破断につながります。取扱説明書でも禁止事項として挙げられていますので、お使いの機種の記載を確認してください。
使用前点検も毎回必要です。見るべきはフック、ロードチェーン、外れ止め金具、ブレーキの効きの4点。フックの口が開いていないか、チェーンにねじれや変形がないかを確認し、異常があれば使用を中止してメーカーまたは専門業者に点検を依頼します。
作業中は次の点を守ってください。
- チェーンをねじった状態で荷重をかけない
- フックの先端に荷重をかけない、こじって使わない。外れ止め金具は必ず閉じる
- 吊り荷の真下、および荷が振れる範囲に立ち入らない
- ヘルメット・安全靴・手袋を着用する
レバーホイストの使用に資格は必要?
手動のレバーホイストは、労働安全衛生法令上の「クレーン等」には該当しません。そのため、単独で使用する場合、玉掛け技能講習などの法定資格は必要ありません。「レバーホイストを使うには資格が要る」という説明を見かけることがありますが、これは正確ではありません。
ただし、資格が不要なことと安全であることは別です。次のような場合は資格・教育の要否が変わります。
- つり上げ荷重1t以上のクレーン等を用いる玉掛け作業を行う場合は、玉掛け技能講習の修了が必要です
- クレーンのフックにレバーホイストを掛けて併用する場合など、クレーン作業の一部となるときは、当該作業に応じた資格が必要です
- 資格が不要な作業でも、事業者には安全衛生教育を行う義務があります
実際の作業がどれに当たるかは現場の構成によって変わります。判断に迷う場合は、労働基準監督署または安全衛生の担当部署に確認してください。
レバーホイストとレバーブロックの関係を理解して正しく選ぼう
レバーホイストとレバーブロックは、別々の機械ではありません。「レバーブロック®」は株式会社キトーの登録商標であり、一般名称は「レバーホイスト(チェーンレバーホイスト)」です。
名前が違っても中身は同じ。比較するのは定格荷重・揚程・本体質量です。使用環境と段取りの頻度によっては、防錆仕様と遊転機構も見てください。
選定の出発点は、吊る荷の重量と必要な距離の実測です。この2つが出れば、あとはカタログの定格荷重表と揚程を突き合わせるだけになります。
※「レバーブロック®」および「Lever Block®」は、株式会社キトーの登録商標です(商標登録第405180号・第405181号)。本記事では同社製品を指す固有名詞としてのみ使用しています。
※製品の仕様・使用方法については、必ず各メーカーのカタログおよび取扱説明書をご確認ください。
※資格・法令に関する記述は一般的な情報であり、個別の作業における要否を保証するものではありません。




















